チョコレート工場

チョコレート工場

概要

この学習のねらいはヒューマンインタフェースデザインの問題点についての関心を持ってもらうことにあります。私たちは貧弱なデザインが広まってしまった世界に住んでいるので、欠陥のあるデザインで生じた問題を自分自身に責任があるかのように(「ヒューマンエラー」、「不十分な訓練」、「私には複雑すぎる」などと)考え、自分たちが対話的に使っている人工物が原因の問題を我慢するように慣らされ(あきらめの境地に追いやられ?) ています。

この問題はコンピュータでは特に目立ってきます。なぜならコンピュータは明らかな目的を持たず、 実際、完全に汎用ですし、また、それが何であるかやどう操作してよいかの手がかりも外見からは伺えないからです。

技能

  • 設計推論
  • 日用品に対する関心

年齢

  • 9 歳以上

時間

  • 1時間以上

教材

  • 子どもごとに必要なもの
    • ワークシート「ドア」 filePDF filePDF
    • ワークシート「アイコン」 filePDF
    • ワークシートの 6 つのカードを 1 セット以上。個々のカードにシートを切って、それぞれのグループに分ける。 filePDF
  • ワークシート
    • 応用と解説 filePDF
  • 授業用補足資料 filePDF

活動

大きなチョコレート工場がウンパ・ルンパと呼ばれるエルフに似た種族によって操業されています。ウンパ・ルンパは記憶力がかなり悪く、言葉を書く事も出来ません。このため、彼らはチョコレート工場を操業する ための手順を憶えることが難しいですし、しばしば間違えることもあります。このため、彼らがとても簡単に操 業できると考えられる新しい工場がデザインされることになりました。

  1. 子どもたちを少人数のグループに分けてストーリーを説明します。
  2. ウンパ・ルンパが直面する最初の問題は液体のチョコレートが入った湯気の立ったバケツを運びながらドアを通り抜けなければいけないことです。彼らはドアを開けるために押せばいいのか引けばいいのか、それともスライドさせればいいのかを憶えることが出来ません。その結果、お互いにぶつかって、べとべとしたチョコレー トをそこら中にこぼすということになってしまいます。
    子どもたちには「ドア」ワークシートを チェックを入れてもらいます。それぞれのドアに対するチェックは 1 つ以上の正解があります。(最初のものを 含めて)いくつかのドアはどうやって開ければいいのかがはっきりしませんので、そのような場合は子どもたち が最初にやってみようと思ったものを記録させます。シートにあるすべてチェックを入れ終わったら、グループ 全体でそれぞれのタイプのドアを比較し、いい点を、特に、どのように働くかを説明しやすい、特に、どのように開くかがわかりやすい、熱いチョコレートのバケツを運ぶときに通るのに適しているかなどに関して、議論 させます。そして、彼らに工場で使うドアと取手の種類を決定させます。
    学習の続きとしてクラスでの議論を行ないます。次の表はそれぞれのドアについてワークシートに短くコメントしたものです。
    19_1.png
    実際のドアには枠やヒンジなどどうやって開くかの手がかりになるものがあります。そして、ドアを内開きにするか外開きにするかの約束もあります。あなたの学校で使われているドアの取手の種類を 分類し、それらが適切なのかを討論します。(たぶん、『ひどく』不適切でしょうが!)廊下に面したドアは内開きですか、外開きですか? それはなぜですか?
    (答え:あなたが出ようとしたとき、廊下を歩いてきた人にドア がぶつからないようにそれらのドアは部屋の中に向けて開きますただし、緊急時の避難がしやすいように外開きになっている場合もあります。)
    ここで鍵となる概念はモノがもつ「アフォーダンス」と呼ばれるものです。アフォーダンスは、根本的かつ認 知的な目に見える特徴で、そのモノの見た目がそれをどのように使うべきかを表しているというものです。ア フォーダンスはそのモノが許すあるいは「許す」操作の種類です。たとえば、椅子は座るもの、テーブルは上に 物を置くもの、ノブはひねるもの、細長い穴は物を挿入するもの、ボタンは押すものということは見た目から(ほぼ)明らかです。でも、コンピュータはなんのためのものだろう? コンピュータは入力(たとえばキーボー ド)や出力(たとえばスクリーン)などの低レベルな能力を除いて、その機能を示すアフォーダンスは存在しません。
    ドアは非常に単純なモノです。複雑なものは説明が必要ですが、単純なものは必要ありません。単純なモノに絵やラベルや操作説明が必要なら、デザインが失敗しているのです。
  1. 異なる種類のチョコレートを入れているポットは異なる温度で調理しなければなりません。古いチョコレー ト工場ではコンロはワークシートにあるようなものでした。左側のつまみは左後ろの口、次のつまみは 左前の口、次のつまみは右前、そして右側のつまみは右後の口をそれぞれ制御します。ウンパ・ルンパはいつも ミスをして、間違った温度でチョコレートを調理したり、つまみを調整しようとコンロの口を横切ったときに袖 を燃やしてしまったりします。子どもたちには自分の家のコンロの調整つまみがどのように配置されているかを 思い出させ、新しい工場のためのより良い配置を考え出させます。
    学習の続きとしてクラスでの議論を行ないます。図はいくつかのよく目にする配置を示しています。
    19_2.png
    左下のものを除いて残りは操作をするときにコンロの口を横切るのを避けるため、前面に調整つまみを置いています。左上のデザインでは、とても多くの調整つまみと口の対応 (マッピング) が考えられる(実際に 24 の可能性 がある)ので、8 つの単語のラベルを付ける必要があります。中央上の「対にした」配置はより良くて、(2 つは 左、2 つは右にまとめられているので)考えられるマッピングは 4 つしかありません。ですから、4 つの単語の ラベルを付けるだけですみます。右上のデザインは調整つまみと口の対応を言語的ではなく図的に示したもので す。(この方がウンパ・ルンパにはいい!)下の 3 つのデザインはラベルが必要ありません。左のものはそれぞ れの口に調整つまみがありますが、格好悪くて危険です。他の 2 つは口の位置を少しずらしていますが、その理由は異なります。中央のものは調整つまみのために場所を開けるために口を移動しています。一方、右のものは つまみと口の対応が明確になるように口を配置しなおしています。
    ここで鍵となる概念は制御するものと実際の起こる結果のマッピングです。物理的な類似性や文化的な標準を 生かした自然なマッピングを使えばすぐに理解できるものになります。図の下段のように空間的に対応付けることは良い例になります。これらは簡単に学習できて、いつまでもおぼえておくことができます。上段の配 置のような無規則なマッピングはラベルが必要だったり、説明や暗記が必要になります。
  2. 工場には完成までのさまざまな段階にある作りかけのチョコレートが入ったポットを運ぶコンベアのベル トで満ち溢れている。これらのコンベアのベルトは中央制御室からの指示に従い、ウンパ・ルンパによって手動 で制御されている。制御室にいる人々はウンパ・ルンパに対してコンベアを止めさせる、スピードを落とさせる、もしくは再始動させるという指示ができる必要がある。
    古い工場ではこれを音声を使ったシステム、つまり、制御室の人の声がコンベアのベルトの制御装置の横にあるスピーカーから聞こえるというもので行っていました。しかし、工場は騒音が大きいので聞こえづらい状況でした。そこで、子どもたちのグループに視覚的な信号を使った計画をデザインさせます。
    ひとつの可能性として、「停止」「減速」「始動」の信号を付けることがあります。この場合、通常の交通信号と 同じ慣習で赤を「停止」、黄を「減速」、緑を「始動」とすべきでしょう。また、交通信号と同じように赤を上、 緑を下に配置するべきでしょう。
    ところがここで一転して、クラスにウンパ・ルンパの国では交通信号が我々のものとは違い、黄は止まれ、赤 は進め、そして緑はもうすぐ停止信号だよということを警告するためのものであるということを明らかにします。
    これはどういう影響を及ぼすのでしょうか?(答:工場はウンパ・ルンパの交通信号の慣習に合わせます。 我々の慣習を押し付けようとしてはいけません。)
    ここで鍵となる概念は「転移効果」と「ポピュレーションステレオタイプ」です。転移効果は、人々が以前か らのモノに対して学んだことや起こることの期待を、新しいけれども類似の状況に対して同様に適用(転移)さ せることです。
    ポピュレーションステレオタイプは、異なる集団ではそれぞれ特定の振る舞いを学び、特定の方 法で物事の働きを期待するということです。交通信号のシナリオは(たとえウンパ・ルンパの国ではそうでない としても)こじつけのように思われるかもしれませんが、私たち自身の世界には多くの例があります。
    たとえば、アメリカで電灯のスイッチは上げたときにオン、下げたときにオフですが、イギリスでは逆です。電卓と プッシュホンのキー配置は異なっています。数値の表現法(小数点やコンマ)や日付の表現法(日/月/年や月 /日/年など)は世界中でさまざまに変化します。
    ウンパ・ルンパの 1 つのシフトがチョコレート工場での仕事を終えたとき、彼らは掃除をし、ポット、フライ パン、水差し、スプーン、かきまぜ棒を次のシフトのために片付けなければいけません。これらの道具を置くた めの戸棚がありますが、次のシフトはいつも片付けられたものがどこにあるのかを見つけるのに苦労していま す。ウンパ・ルンパは物事をおぼえるのが苦手で、「ポットはいつも中央の棚に置く」「水差しは左に置く」など の規則を守ることに苦労しています。
    子どもたちのグループによりよい解決法を考え出させるか挑戦させてみましょう。
    19_3.png
    図はよい配置を示しています。(これはときどき、ヨットなど他の場所で置いたものが滑って動きまわら ないように止めておくという異なった理由で使われているものです。)ここで鍵となる概念は、すべてのものを どこに置くべきかを明らかにするという「視覚的制約」の利用です。それぞれの穴の大きさと形からそれがどの 器具のためのものかが明らかになっています。つまり、デザイナーは任意の慣習に頼らなければいけなくなるこ とを避け、視覚やモノの物理的特性を用いた制約を課しているのです。
  3. チョコレート工場の中央制御室には個々の機械を操作するための多くのボタンやレバーやスイッチがあり ます。これらにはラベルが必要ですが、ウンパ・ルンパは字が読めないので、ラベルは言語ではなく絵で表したアイコンのようなものにしなければいけません。
    アイコンとはどんなものか、子どもがわかるように、211 ページにいくつかの例を示しています。子どもたち には(たとえば、郵便箱に入れられようとする手紙はメール送信を表しているだろうなど)それらのアイコンが 意味するであろうことを示させます。この演習には「正しい」答はありません。狙いは単に可能性のある意味を 示させることにあります。
  4. では、チョコレート工場のアイコンのデザインを行ないましょう。212 ページのカードは相互に関連した機能群を示しています。そして、それぞれの子どものグループは他のグループに何であるかを知られないように 1 つ以上のカードを受け取ります。各々の機能群は、5、6 個の操作それぞれに対応する個別のアイコンを含んでい ます。これらの機能群のために、制御パネルをデザインする必要があります。その後、それぞれのグループは、 他の子どもたちがアイコンの意味を推測できるように、個々の操作が何であるかを説明せずに彼らの作品を見せます。想像力と色を使い、単純で明確なアイコンを作るよう働きかけましょう。

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